預貯金の解約
被相続人の遺産に、預貯金が含まれている場合、相続人の内の1人が、勝手に当該預貯金を解約したり、おろしたりすることは、現在ではできません。
すなわち、後述の、平成28年最高裁大法廷決定以前の、判例法理(=判例によるルール)にしたがえば、分割債権は、相続開始と同時に当然分割され、遺産共有されないことになっていました(最判昭和29年4月8日民集8巻4号819頁参照)。そして、預貯金も、法的に言えば、金融機関との消費寄託契約(民法666条)であり、預貯金の引き出しは、法的には、同契約に基づく払戻請求権と構成されます。そうすると、預貯金の払戻請求権も、性質上、分割可能(ex. 2000万円の預貯金であれば、1000万円ずつに分割可能)ですので、同請求権は、相続開始とともに、各相続人に当然分割されて、各相続人は、自分の持分の限度で、自由に引き出すことができました。
しかし、平成28年12月19日の最高裁大法廷決定によって、判例変更され、預貯金の払戻請求権は、当然分割されず、共同相続人間で共有され、遺産分割の対象となる、と判示しました(最大決平成28年12月19日民集70巻8号2121頁)。その結果、先のように、自己の持分の限りで、自由な引き出しはできなくなり、預貯金を引き出すためには、共同相続人全員の合意が必要になりました。
したがって、今後、被相続人の預貯金を引き出すためには、①共同相続人全員の同意書か、②遺産分割協議書を金融機関に持参しないと、払戻しには応じてもらえませんので、この点には注意が必要です。
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