配偶者居住権
民法の中でも相続に関して規定している、いわゆる相続法と呼ばれるものが改正され、2020年4月1日から配偶者居住権(民法1028条)と呼ばれるものが創設されました。配偶者居住権とは、配偶者が相続開始の時に居住していた被相続人の財産に属した建物について、配偶者が原則として終身、その居住建物を無償で使用することができる法律で定められた権利です。
これは、夫婦の一方が死亡した場合でも、他方の配偶者はそれまでに居住してきた建物に引き続き居住することを希望するのが通常であるといえ、また、相続人である配偶者が高齢者である場合には、住み慣れた居住建物を離れて新たな生活を立ち上げることは精神的にも肉体的にも大きな負担となると考えられるため、配偶者の居住権を保護するという趣旨で創設されたものです。配偶者居住権の創設により、遺産分割における選択肢の一つとして配偶者居住権を取得させ、または配偶者居住権を遺贈の目的として取得させることができるようになりました(民法1028条)。
また、配偶者短期居住権(民法1037条)というものも創設されました。これも、相続に伴う配偶者の居住権の保護を目的とするものです。従来は「共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである」とする判例(最判平成8年12月17日民集 50巻10号2778頁)により、被相続人の死亡により相続が開始した後も、配偶者の居住権に一定の保護が図られていました。
しかし、あくまでも、「推認」にすぎないため、被相続人が異なる意思表示をしていた場合などは、この判例によっても配偶者が保護されない恐れがありました。
そこで、配偶者の短期的な居住権を保護するため、配偶者短期居住権を創設し、居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合には、遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日または相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間(民法1037条1項1号)、それ以外の場合は、居住建物取得者が配偶者短期住居権の消滅の申し入れをした日(民法1037条3項)から、6か月を経過する日までの間(民法1037条1項2号)、無償で、配偶者は居住できることになりました。
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