相続放棄
まず前提として、相続とは、被相続人死亡によって発生し(民法882条)、被相続人の一切の権利義務を承継するものです(896条本文)。
すなわち、相続とは、被相続人の生前有していた不動産や、預貯金等のプラスの財産だけでなく、借金などの債務、すなわちマイナスの財産(負債)もひっくるめて引き継ぐことを言います。
そのため、例えば、被相続人にほとんど財産はなく、他方多額の借金を負っていたような場合には、相続人は、相続という偶然の事情により、多額の借金を「肩代わり」しなければならないおそれがあります。このような場合に使える法的な手段が、相続放棄です。
そもそも、被相続人の死亡によって、相続が開始されたとき、相続人としては、相続に対して、①単純承認、②限定承認、③相続放棄の3種類のアクションをとることができます。
①単純承認(920条)とは、文字通り、単純に相続する旨承認することを言います。したがって、相続人が①単純承認をした場合には、被相続人の財産も負債も、一切承継することになります。
②限定承認(922条)とは、単純に言えば、被相続人から承継する財産がプラスの限度で承継する旨のことを言います。すなわち、被相続人の財産から、その有していた負債を差し引いて、残った部分のみ、相続する、というものです。この②限定承認を使えば、相続人が相続によって負債を引き継ぐことはありません。もっとも、②限定承認は、相続人全員で行わなければならないとされているため(923条)、相続人の足並みが揃わないと使えないという点が欠点です。
そして、③相続放棄(939条)とは、自分は被相続人の財産を(負債も含めて)一切相続しない旨の意思表示です。すなわち、③相続放棄をすると、被相続人の負債を承継しなくてすむことになります。もっとも、③相続放棄をしてしまうと、負債だけでなく、プラスの財産までも相続できなくなる点は欠点であると言えます。しかし、②限定承認と異なり、1人でも③相続放棄は可能なので、その点は利点であると言えます。
なお、③相続放棄をする際の注意点としては、ⓐ相続開始を知った時(=基本的には、被相続人の死亡を知った時)から3か月以内に(915条1項本文)、家庭裁判所で、相続放棄をする旨の申述をする必要があること(938条)、ⓑⓐの前に、被相続人の財産を処分してしまうと、①単純承認をしたことになってしまい、相続放棄できなくなってしまうこと(921条1号、これを法定単純承認と言います。)、などが挙げられます。
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